竹取物語、最終章『ふじの煙』より。
もはや会えないというのなら、不死の薬を飲んだところでどうなるというのだろうか
という意味を持つこの歌を詠み、帝は薬を富士山へと捨てる。
そして爾来、火口は燃え続ける。
忘れることは虚しいことですが忘れられることは悲しいことです。
かぐや姫は地上での記憶をすべて忘れ月に帰っていきました。
帝とかぐや姫を繋ぐのは帝の記憶のみ。
そんな中、帝が永遠を生きることになれば幾星霜もの年月の間にきっとその記憶は失わずとも薄れてしまうでしょう。
そんなことなら記憶が鮮明なうちに死んだほうがまし……
帝の判断は正しいのか、それを知る者はかぐや姫のみ、ということにしておきましょう。
蛇足ですが、翁夫妻はかぐや姫昇天の後、悲しみに明け暮れ、没落し苦しんだ末に息を引き取ったそうです。